総診よもやま話
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なぜ紹介状が必要なの?
紹介状って?
ある医療機関に受診していた患者さんが他の医療機関を受診する際に診療情報の受け渡しをするものです。初回受診のときに患者さんに持ってきていただくのが原則です。紹介元から当院地域医療センター病診連携室を通して診療予約を取っていただく場合には、予めFAXで診療情報を提供していただいています。
どんな情報が受け渡しされるの?
概ね以下のような情報です。
・紹介の目的(精査?治療?セカンドオピニオン?)
・これまでの経過
・これまでに行われた治療(薬や点滴など)の内容
・血液検査や画像検査のデータ
紹介状がないとどうなるの?
正しい診断を導くためには、患者さんの視点から見た情報と医療従事者から見た情報の双方が欠かせません。これまでに行った検査や使用した薬に関する正確な内容なども紹介状から得られる重要な情報です。また、もともとの主治医が患者さんの病態をどのように考えどのような治療を行ったのかを知らないまま新たに治療を行うことになると、効果が見られなかった治療を再び行うことになったり、もともと行われていた正しい治療を妨げることになったりする恐れもあります。
どうすれば紹介状を書いてもらえるの?
もともとの主治医から他の医療機関への受診を勧められた場合には、何も言わなくても大抵は紹介状を書いてもらえます。患者さん自身の希望で他の医療機関を受診しようとする場合でも、患者さん側からの申し出があれば紹介状を書いてもらえる場合が多いと思います。多くの医師は患者さんを紹介したり紹介されたりということを数多く経験しており、患者さんが心配するほど紹介することに対してさほど抵抗感を持っていません。逆に自分の知らないところで他の医療機関を受診されることのほうを不快に思うかも知れません。
なぜ「お薬手帳」が必要なの?
患者さんには、このようなご経験をされた方もおられるのではないでしょうか。
医師「現在、どんなお薬をのんでおられますか?」
患者さん「えーっと、血圧のお薬と、コレステロールの薬と、あと粉薬と・・・、何だったかな?」
医師「お薬の種類によっては今回処方しようと考えている薬と影響し合う場合があります。血圧の薬などはいろいろな種類のものがあるので名前がわかると大変助かるのですが・・・。」
患者さん「これはどうですか?(処方された薬を取り出す)」
医師「この薬は何だったかな?薬に書いてある番号を調べてみますね。あと、こちらの粉薬はわかりませんね。」
実は、薬そのものをみてもすぐには薬品名が分からないことがあります。また、粉薬は袋に名前が書いてなければ、その内容はまったくわかりません。
おくすり手帳には薬の正確な名前が書かれているだけでなく、一日量や処方日数、処方された日付や医師の名前などたくさんの情報が書かれています。処方された薬に関するこれらの情報を一つ一つ覚えておくことは大変ですが、おくすり手帳を見るだけで簡単にわかります。思いがけない薬が病気を考える上で重要な手がかりになることもあり、おくすり手帳は医療者にとっても貴重な情報源です。お持ちの方は受診の際に是非ご持参ください。
お薬手帳は調剤薬局で、無料でもらうことのできる手帳です。薬局で薬をもらう際に提出すると、処方された薬が一覧になったラベルを貼ってもらえます。
いろいろな薬局を使っている場合でも一つの手帳を毎回提出することが大切です。
点滴って本当に必要?
ここでは“いわゆる風邪”のときの点滴について考えてみます。
私も子供の時に高熱を出すと、点滴をしてくれる医院に連れて行かれました。このように点滴を目的に外来受診される方も多いようです。薬をもらったり、検査をしてもらうと安心するのと同じように、点滴をしてもらうだけで安心するという心理背景があるのでしょう。
さて点滴について考えてみます。あの点滴バックに入っている液体の正体は何でしょうか? せっかく痛い思いをするからには、“ウイルスを殺す”“熱を下げる”“下痢を止める”薬が入っていてほしいところですよね。しかし、なんと主成分はただの水です。水に少々の塩分や糖分を加えて、体液に近づくよう作られています。まるでスポーツドリンクのCMですが、外来でよく使われる3号輸液200ml中には塩0.18g、糖8.6gが含まれています。ちなみに味噌汁一杯に含まれる塩1gやオレンジジュース200mlに含まれる糖20gにも足りません。ラグビーの魔法のやかんの中身が「ただの水」であるように、点滴のバックの中身は「命の水」ではないのです。症状を和らげる風邪薬的な成分も入っていません。ときにはビタミン剤が添加されることもあります。しかしたとえ数日間ほとんど食べられなくてもビタミンが欠乏することはなく、それでも「ただの糖入り塩水」よりビタミン入りの方がいいと言うのは、「風邪には甘酒より卵酒の方が絶対効くはずだ!」と言うのと同じレベルです。
結論としましては、点滴は下痢や高熱で多くの水分が失われ、かつ口から十分に水分を補充出来ないときにのみ必要です。とくに小児や高齢者は、そういった状況になり易く注意が必要です。また高齢者では、「食欲がない→脱水→だるい→食べられない→脱水の悪化」という負のスパイラルに陥ることがあります。そんなときのたった一本の「糖入り塩水」点滴が、悪化し続ける全身状態を一気に好転させる決定打になることもあるのです。しかし脱水にもなっていない患者に点滴をするという不要な医療行為は、医療経済的にも慎むべきです。また点滴箇所から出血したり、点滴が漏れて腫れることもあります。さらに針で皮膚を突き刺し直接血管内に液体を入れる行為は、重大な感染症の危険も伴うのです。
最後になりますが、人間の体は手術等の大きな侵襲が加わると塩分と水を蓄えようとします。恐らく風邪や仕事の疲れなどのストレスでも似たようなシステムが働くはずです。当直明けの早朝に飲む温かいインスタント味噌汁は五臓六腑に染み渡り、夏の冷えたビールとは違った幸福感をもたらします。弱った体は水と塩を欲しているのです。風邪薬でも点滴でもなく、「栄養と水分をしっかり摂って寝る」これこそが副作用のない最適な“風邪治療”なのです。
かかりつけ医を持ちましょう
かかりつけ医とは
風邪などで体調が悪い時に診てもらったり、自分や家族の健康状態の相談に乗ってくれる身近にいる医師のことです。
かかりつけ医を持つことのメリット
自分や家族の普段の様子をよく知っており、少しの体調の変化に気づいてもらえます。健康に関するあらゆる相談に乗ってくれます。
例えば、風邪をひいた時、インフルエンザの予防接種を受けたい時、大きな病院を受診すべきかどうか悩んだ時、煙草をやめたい時など入院や検査などが必要な場合、適切な病院・診療科を紹介してもらえます。
食事や運動など日常的な健康管理のアドバイスをもらえます。
かかりつけ医と大学病院・総合病院との違い
大学病院・総合病院 |
かかりつけ医 |
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診療の対象 |
患者さんだけ |
家族や社会も視野に入れる |
対応すべき問題 |
明らかになっている |
明らかでない場合も多い |
扱う問題の数 |
単一の問題を扱う |
複数の問題を扱うことも多い |
継続性 |
問題が解決すれば関係が終了 |
問題解決後も関係は継続 |
診察にあたる
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曜日により異なる
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毎日同じ
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このようなかかりつけ医を探しましょう
話をしっかり聞いてくれる。
病気のことや検査や治療についてわかりやすい言葉で説明してくれる。
自分や家族の意思を尊重してくれる。
家や勤務先の近くなどで通いやすいということも大切です。
より健やかな人生を送るために自分の人生を一緒に歩んでもらえるかかりつけ医をもちましょう。
風邪って?
風邪ってなんですか?
風邪のほとんどはウイルスによって、のどの痛み、せき、発熱、頭痛、倦怠感、くしゃみ、鼻汁・鼻詰まりといった上気道(鼻や口から声帯まで)の症状が出現する病気です。
風邪はどうやって治せばいいのですか?
風邪を引き起こすウイルスに特別な治療法はありません。患者さんの免疫力(体内に入ったウイルスや細菌、異物などから自分自身の体を守る力)によほど問題がない限り、時間とともにウイルスは自然に身体から排除されます。処方される薬の多くは風邪の症状を緩和することを目的としており、風邪そのものを治すものではありません。風邪はほとんどの場合、深刻な病気や合併症を引き起こすことはありません。ウイルスが排除された後に数日~数週間、微熱や咳、鼻汁が残ることがあります。
抗生剤を処方してもらった方がよいのでしょうか?
抗生剤は細菌に対して効果がありますが、ウイルスに対しては効果がありません。原因が違います。抗生剤を使用して効果があったということがありますが、自然に良くなった経過にすぎないでしょう。抗生剤のもたらす副作用(下痢、肝障害、悪心、発疹など)が出ることもあるので、風邪の度に服用すべきではありません。また抗生剤を乱用していると抗生剤が効かない細菌(耐性菌)が出やすくなることも知られており、本当に身体に細菌が悪影響を及ぼしたときに抗生剤の効果がなくなっていることがあります。必要な時に備え極力風邪には抗生剤を使用しないことをお勧めします。
風邪のときの熱はどうすればよいですか?
発熱はウイルスに対する免疫反応により生じています。ウイルスと戦うために熱を産生しており、熱で脳にダメージを受けたり、熱で病気を悪化させることはありません。しかし、熱を下げることによって治りが悪くなる事もないため、不快な場合は解熱剤やクーリング(氷枕などで熱を下げるなど)が有効です。熱を下げることで筋肉痛、関節痛などの全身症状も多少軽減できます。持病によっては早期に熱を下げることが勧められる場合もありますので、かかりつけ医にお尋ねください。
どんなときに病院にかかればいいのですか?
これまで経験したことのない強い頭痛や、食事が食べられないほどの喉の痛み、ぐったりして動けなくなるような高熱など、症状の程度が極端に強い場合は病院を受診した方がよいかも知れません。また妊娠していたり持病がある方はかかりつけ医とあらかじめ体調が悪いときにどのようにしたらよいかを相談しておくといいでしょう。また、病院を受診するときはどのような薬を内服していたのかを、お薬手帳などを見せて具体的に教えてください。
風邪を防ぐにはどうしたらよいでしょうか?
風邪を引いている人の咳やくしゃみで空中に飛散したウイルスを吸い込むと風邪がうつります。また、ウイルスが付着した手すりやつり革、ドアノブや自動販売機のボタンなどを触ってしまった手で、自分の鼻や口や食べ物に触れたりしてうつることもあります。そのためマスクの着用、うがい、手洗いが風邪の予防には重要となります。
「血液培養」って?
前回は風邪について取り上げました。風邪の原因はウイルスであり抗菌薬(抗生剤)が効かないこと、抗菌薬をむやみに使用していると抗菌薬の効かない細菌が出やすくなること、抗菌薬にも様々な副作用があることをお話しました。
それでは、どのような時に抗菌薬を使うのでしょうか。今回取り上げる「血液培養」検査で細菌が見つかった時は積極的に抗菌薬を使って治療します。
「血液培養」とは?
私たちの体は表面から菌が入り込まないようにいくつものバリアを備えているので、血液の中には菌(細菌や真菌など)はいません。しかし、これらのバリアを破り菌が血液の中に留まってしまうことがあります。血液を採取して菌がいないか調べる検査が「血液培養」検査です。
どんな時に「血液培養」検査をしますか?
「血液培養」検査を行うのは血液の中に菌が入り込んでしまっていると予想される場合です。
・長い間原因不明の熱が続く時
・すでに尿や肺などに菌が入り込んでいる時
などに行います。
菌が血液の中に入り込んでいても抗菌薬を使っていると検査が陰性となってしまうことがあるため、一度抗菌薬の使用を中止してから検査を行うこともあります。
どのような検査ですか?
検査は通常別々の2箇所から針を刺して行います。検査の際には周囲に存在する無害な菌が誤って培養されてしまうことがあります。別々の2カ所から血液を取ることで本当に血液の中にいる菌なのか、偶然培養されてしまった菌なのか推定できるのです。
すぐに結果が出ますか?
「血液培養」検査では菌にとって居心地のよい環境を与えて菌が増えてくるのを待ちます。菌が増えるまで数日かかるため、検査を行った当日には結果は出ません。
血液培養」検査をせずに抗菌薬を出してもらえませんか?
抗菌薬には菌との相性があり、どの抗菌薬にも効きにくい菌があります。
血液の中にどのような菌がいるのか知ることができれば、その菌に対して効果の高い抗菌薬を選ぶことができます。「どの抗菌薬を使えばよいのか」のヒントを与えてくれる検査が「血液培養」検査なのです。
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